2025年12月 6年生の学習プランについて
インフルエンザの流行期であり、学級閉鎖も多い時期です。ご家庭でも十分に気をつけられているかと思いますが、睡眠時間を十分に取ったり、体調管理をし、入試前の約2ヶ月に望んでいきましょう。- ストレス発散型の注意:ストレスを学校で発散するタイプのお子さんが学校に全く行かなくなると、学校を休むことでストレスが溜まり、学習効率が落ちる危険性があります。このタイプのお子さんには、たまには登校する予定を組む方が良いでしょう。例年の傾向から、1月にはほとんどの受験生が登校しなくなる可能性が高いと見られています。
- 学力と得点力:入試直前期に高めるべきは「得点力」であり、「学力」ではありません。
- 学力:解ける可能性を高めること。
- 得点力:実際に丸がついた数。
- 得点力は学力に依存しますが、学力が上がっても必ずしも得点が上がるとは限りません。やる気が増すことで、学力がそれほど上がっていなくても得点力が上がることが多いです。
下記のチェックをクリックすることで、今月のチェックポイントを個別に動画・要約で確認できます。
必要だと思ったものだけでもよいので、1つでも多く取り入れて頂くことで、より良い学習習慣を習得することが可能です。
動画の内容をすぐに読んでいただけるように「要約」もつけておりますので、こちらも合わせてご参考ください。
▢チェック1第一志望の決定が11月にできそうですか?
- 合否の考え方:ギリギリ合格や補欠合格であっても構わない、という考え方を前提とします。
- 深海魚(しんかいぎょ)の心配:上の学校にギリギリで合格すると、入学後に成績不振になる危険性が高い、時に揶揄して深海魚とも言われる意見がありますが、これはあまり気にしなくても良いです。
- 入学後の対策の重要性:合否が決定してから入学式までの約2ヶ月間(関東では2月上旬から4月上旬、関西では1月下旬から4月上旬)の過ごし方が重要です。この期間に、受験直前のような長時間学習は不要ですが、毎日少しでも勉強する習慣を崩さず、中学校の予習をしっかり行えば、補欠合格であっても心配いりません。
- 予習をしておけば、最初の中間テストで良い成績が取れ、お子さんは「自分はこの学校でかなりできる方だ」と立ち位置を認識し、不安が解消できます。
- 現状での可能性の判断:過去3回の合否判定で、合格可能性が20%以下が続いている場合、現実的な合格可能性は低いです。
- しかし、もしその学校への志望が子どものモチベーションになっているなら、第一志望は維持して良いです。
- 挽回の可能性:合格可能性が30%〜35%であれば、残り2ヶ月の勉強でギリギリ合格ラインに到達することは十分に可能です。
- 例として、合格可能性30%ラインから80%ラインへ到達するために必要な点数は、4教科合計で40点程度(1教科あたり10点、算数なら2問)の得点力アップで達成できる場合もあります。これは得点力、つまりやる気や前向きな気持ちでカバーできる範囲です。
- 挑戦の醍醐味:確実な併願校を確保した上で、勇気を持って第一志望に挑戦することも中学受験の醍醐味です。
▢チェック2 第一志望を「必ず変える」必要はないことを知っていますか?
- 志望校変更の判断:過去3回の合否判定で20%を切っている場合でも、志望校を変えることでお子さんのやる気が急になくなると思われるなら、第一志望は変えない方が良いです。
- この場合、「第一志望以下に合格する作戦」に変えつつも、子どもには「第一志望に受かるために頑張ろう」と励まし続けます。
- 避けるべき否定的な言葉:「こんなことしてると合格できないわよ」という否定的な言葉は、どの時期でも、どの受験生にも言ってほしくない言葉です。
- 子どもは「合格できないような勉強を続けてきた僕は合格できない」と感じ、成功の予感を失うと頑張れなくなります。
- ポジティブな言葉への変換:「何々すると合格できるわよ」「この調子で頑張れば成功できそうね」という言い方に変えましょう。
- 志望校を変更する場合:単に「第一志望に届かないから変えよう」と言うのは、子どものモチベーションを下げるため避けるべきです。
- 変更先の魅力の確認:親子で変更先の学校の魅力(例:クラブ活動、校風)をしっかり確認し合うことが重要です。
- 「良い学校」の定義:一般的に「良い学校」と言われる学校が、その子にとって良い学校とは限りません。その子にとって良い学校になるかどうかは、入学後の勉強や友人関係によって決まります。
- 親の喜びを伝える:「この学校に行ってくれても、お父さんやお母さんは本当に嬉しいんだ」と親の期待や喜びを伝えることが、志望変更を成功させる鍵となります。
▢チェック3 併願校の選択の基準を知っていますか?
鉄則:受験する学校は、入試問題の傾向が似ている学校を選択することが鉄則です。傾向が違いすぎると、過去問演習の量が大幅に増え、注意すべき事柄が増えて点数が取りにくくなります。
問題傾向の分類(算数例):
思考錯誤系(問題文が長い、情報整理が必要):桜蔭、開成、筑駒、栄光、麻布、武蔵などがこれに該当し、問題文が長く、考えることや手作業(記述)を多く要求されます。麻布傾向と呼ばれることもあります。女子学院は近年、知識系から思考錯誤系に寄ってきています。
知識系(素早い処理が望まれる):豊島岡女子学園、女子聖学院などが挙げられます。素早く解法を発見し、知識の組み合わせ能力(応用力)が問われる問題が多いです。問題数が多めである傾向があります。
基本中心:共立女子、富士見大など、基本的な問題の正答率や正確さが試される学校です。
共学の動向:芝浦工業大学付属は、近年、公立中高一貫校の適性検査型のような思考錯誤系の形式に完全に移行しています。
▢チェック4 併願校の選択は2つ以上候補がありますか?
出願数:最近は当日発表や午後入試の利用により、5~6校、あるいは7~8校程度出願するのが一般的です。
偏差値の幅:安全を確保するため、第一志望校から第三志望校までの偏差値の幅を10以上(場合によっては15)取るべきです。
第二・第三志望校の設定:
第二志望:合格可能性80%ラインの偏差値が、お子さんの現状の偏差値になるように設定するのが最も安全です。
第三志望:合否判定テストで70%以上の合格可能性が出ている学校を選びましょう。これにより、子供は「ここなら大丈夫」という安心感を持って挑戦校に臨めます。
午後入試の利用:午後入試は便利ですが、ここ数年で偏差値がぐんぐん上がっている学校が多いので、事前に十分な調査が必要です。
具体的な受験プランの例:
男子難関校(開成が本命の例):1月10日の大宮開成で合格を取り、1月16日の栄東B、21日の東邦大東邦と進み、2月1日に開成に臨むプランなどが考えられます。
男子中堅校(法政など):法政大学の試験を2月1日、3日、5日と3回連続で受験し、2月2日にどこか抑えの学校を設ける方法(法政は3回目に合格する例が多い)もあります。
前受け校(千葉・埼玉)での合格:2月1日の本番前に、千葉・埼玉の学校で必ず1つ以上の合格を取っておくことが非常に重要です。これで不合格が続くと、子どもは非常に焦り、不安になります。
▢チェック5 【関東】千葉・埼玉の1月受験を受けますか?
受験の目的をお子さんに明示する:1月の前受け校を受験する目的を、必ずお子さんに伝えてください。
通う可能性がある学校:過去問演習を3年分以上行い、事前に会場の下見をしておくべきです。
予行演習としての利用(通わない場合):これは「受験料の高い模擬テスト」であり、「本番に向けた貴重な経験」だと説明します。多くの受験生が集まる独特の雰囲気を味わうことが目的です。
午後入試への適性確認:午前(例:栄東)と午後(例:埼玉栄)に入試を受けてみて、お子さんが午後まで集中力を保てるかを確認できます。
前受け校の合否への対応:
全勝(全て合格)の場合:気が緩んで「入試はこんなものか」と油断し、2月1日の本番で失敗する危険性があります。お子さんが最も信頼している塾の先生などに、「これは本番ではない」と気を引き締める言葉をかけてもらう手配をしておきましょう。
全敗(全て不合格)の場合:お子さん、親御さんともに不安がピークに達します。この場合も、お子さんが最も信頼する先生(塾の先生や家庭教師)に、不合格の原因を考えさせつつ、「元々の学力は十分高い。今からが本番だ」と前向きに励ましてもらう準備が必要です。
▢チェック6 【関西】プレ入試の結果の活用の仕方を知っていますか?
プレテストの利用:プレテストは合格を約束するものではありませんが、本番の雰囲気にのまれないための対策として重要です。
会場が異なる場合の雰囲気の変化を経験し、テスト中にどこで焦ってしまったのかを確認するために利用します。
復習:志望校でないプレテストの解き直しは不要です。志望校のプレテストであれば、間違った箇所の見直しは行いましょう。
▢チェック7 【算理】中堅校・難関校でも捨問があるのをご存知ですか?
- 目標点:目標は満点ではなく、合格者最低点を超えることです。
- 合格者最低点は、概ね合格者平均点と受験者平均点の中間あたりに位置し、通常は5割〜60%程度です。つまり、40%は間違えても良いことになります。
- 捨てる練習:合格点を確実に取りにいくため、「取れる問題で確実に点数を取り、そうでない問題は勇気を持って捨てる」練習が有効です。
- 捨てる問題の判断基準:難しすぎる、またはめんどくさすぎる(手間取る)問題です。
- 時間配分の指導:お子さんが1問に手間取っている場合、「あと何分ぐらいで解けそう?」と質問し、時間がかかりすぎるようなら、次へ進む判断を促します。子どもはかけた時間が無駄になることを恐れて、なかなか問題から離れられないことがあります。
- 大問の取捨選択:
- 多くの学校(特に中堅・中堅上位)では、前半60点分が優しめで、後半40点分が大問で難しい傾向があります。合否を分けるのは前半60点分の得点率です。
- 難しい大問であっても、小問の(1)番は意外に優しいことが多いため、(1)番だけ解いて、難易度の高い(2)番や(3)番は後回しにして構いません。配点は、簡単な(1)番も難しい(3)番も同じ5点であることも多いです。
- 終了前10分間の使い方:残り10分で大きく点数が変わります。
- 「あと10分しかない」と気づいても焦らないよう、「空欄がたくさんあっても心配ないよ。残り10分で解けそうな問題から手をつけ、1個でも2個でも丸を増やせば、合格に近づくんだ」と教えてあげてください。
- 国語の選択問題の注意:選択肢の文章が非常に長く、形式もバラバラな問題(例:渋幕などで出題)は、時間がかかるため後回しにするという判断も必要です。
▢チェック8 過去問を軸にした勉強が続けられていますか?
過去問の振り返り:過去問を解くこと自体より、振り返りが重要です。なぜ間違えたのかを確認し、今の学力で取れる点数を増やしていく(得点力向上)ことに焦点を当てます。
その他の学習:過去問以外にも、理科・社会の知識確認、国語の語彙力強化、志望校別特訓の課題などは必要です。
やり直し・基礎の深追いの危険性:
やりすぎは良くない:間違いの解き直しに時間をかけすぎたり、苦手分野の類題を大量に集めてやらせたりすると、かえって自信を失うことがあります。例として、混合計算の逆算の練習は、子どもが集中力が持続する10分程度(約3問)に留めるべきです。
基本に戻りすぎない:過去問で間違えた問題の「周辺」の基礎知識をやり直す程度で十分です。基礎の基礎まで遡ると、学習量が膨大になり、自己肯定感を下げてしまう危険性があります。
具体例:開成志望の子が計算間違いを恐れ、小6のこの時期に小1レベルの百ます計算を強制され、かえって不安になった事例。速さの問題が苦手なため、時間計算、速さの単位換算とどんどん基礎に戻り、やるべきことが膨大になった事例があります。
合格点主義:完璧を目指さず、とにかく「合格最低点を超えればいい」という気持ちを持ち続けることが大切です。
▢チェック9 親の心配が、子供に伝わっていませんか?
親のストレス:親御さんのストレスは非常に高く、子ども受験後に体調を崩す方も多いです。
不安の伝染を防ぐ:親の心配や不安を、できる限り子供に感じ取らせないようにすることが最も重要です。
実践すべきこと:
笑顔と会話:無理やりでいいから笑顔を向け、勉強から離れた楽しい会話を増やしましょう。
ポジティブな言葉への変換:否定的な言葉(「そんなんじゃ合格できない」)を肯定的な言葉(「こうすると合格できそうね」)に変換します。
長所を強調した声かけ:欠点を指摘するのではなく、「あなたは早いから、もう少しゆっくりやると計算ミスは減るよ」というように、「〇〇だから」の最初を子どもの長所に変えて話すことが有効です。
未来の会話:中学校に入った後の部活動など、勉強以外の楽しい未来について話すことは、子どもの意欲を高めます。
弱点対策の時期と得意の強化
- 弱点対策の期限:弱点対策は11月末までと心得るべきです。
- 弱点対策の弊害:12月以降も弱点対策に時間を割き続けると、その分他の3教科の学習が減り、4教科合計の点数が上がらなくなるため、合格から遠ざかります。
- 12月以降の戦略:
- 12月は4教科のバランスを良く勉強し、4教科合計を上げる方向へ切り替えます。
- 1月(関西では12月中旬以降)は、得意を固めて点数を確実に取れるところを増やすことに注力します。得意なことをやると快適で、学習意欲が高まり、モチベーションが上がります。
奇跡の要因:最後の2週間で成績がぐんと伸びて合格する子がいるのは、この「得意を固めて良い気持ちで受験に向かう」戦略が成功するからです。
▢チェック10 時事問題の勉強は「暗記」ではないことを知っていますか?
事事問題の傾向:単なる知識や暗記問題ではなく、今世の中で起きていることと、過去の歴史や地理的条件との因果関係を考えさせる問題が多いです。
固有名詞を問う問題もありますが、配点は少ないです。
学校による出題頻度:時事問題を多く出す学校と、ほとんど出さない学校があるため、志望校の傾向を事前に掴んでおく必要があります。
効果的な学習方法:食事中にニュース番組がかかっている時などに、親御さんが仕組みを説明したり、言葉の意味を理解させたりするなど、会話の中で行うことが非常に有効です。
具体例:気候変動や水温上昇の話(タコが逃げ出し、カニが増えたニュースなど)から、漁獲量の話に広げるなど。また、今年度は米問題(米の金額、農政、需要供給)が出題される可能性が高いと予想されています。
各塾の学習ポイントのチェック
SAPIXの12月の学習ポイント
四谷大塚/早稲田アカデミーの12月の学習ポイント
日能研の12月の学習ポイント
浜学園の12月の学習ポイント
まとめ
まとめ
入試まで残りわずかなこの時期、親御さんの不安感が子供に伝わり、勉強に身が入らなくなるということが毎年起こります。それを避けるためにも、親は笑顔を向け、前向きな言葉をかけ、否定的な言葉は避ける意識を持つことが最も重要です。勉強以外の会話で、子どもの心と体をほぐしてあげましょう。
そして、過去問の振り返りに集中し、第一志望と併願校を決定したら迷わないことが重要です。今からでもぐんと伸びる子は毎年必ずいるため、現在の合格可能性が低くても諦める必要は全くありません。
補足:この時期の受験準備は、マラソンでいえば、ラストスパートをかける前の給水所のようなものです。水(基礎)を過剰に摂取(深追い)すれば胃が重くなり走れなくなります(学習効率の低下)。必要な量の水(周辺知識)を取り入れ、一番得意なギア(得意分野)で加速し、「ゴール(合格)は近い」と信じて走り切るための精神的な燃料(ポジティブな言葉と親の笑顔)を満タンにすることが求められます。